すこしずつ面白いなら笑うしか 氷が溶けてあふれるグラス
何しても羽根は羽根よな外套に詰めたカードと失敗談と
つまんないものを壊して去ってゆく君こそが花 ひときわつよく
命ほどく糸をたどって透かし編む無私の祈りのうつくしいこと
空想の流砂ひとまず飲み込んで御都合主義の真ん中に立つ
-------
濃紺と呼べるくらいに青色の夜をなぞって目頭に塗る
黒猫の覗くショーケース、向こう側 やさしさのあとやさしくぬける
15℃のペールトーンに這う線路 大著に寄せるあとがきを書く
生ぬるい風の朝辺に突っ立ってプール帰りの退屈に似た
褐色の桜と明けゆく空遠く たまにあの日に帰れなくなる